DDASA 福岡きょうだい会会長 工様×代表白石インタビュー対談動画

福岡きょうだい会の会長を務める工弥姫さんとインタビュー対談をしました。

福岡きょうだい会は障がいを持つきょうだいがいる「きょうだい児」の思いを大切にしている会です。

発達障害支援アドバイザーコースのeラーニングの受講生でもあり、受講生の声としてeラーニングサイトにも受講した感想などを掲載しています。

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一般社団法人発達障害支援アドバイザー協会 インタビュー対談

2020/05/05 福岡きょうだい会 会長 工 弥姫

 

白石:工さんから自己紹介をお願いします。

 

工:福岡きょうだい会の会長をしております、工 弥姫です。私の実の妹が自閉症で知的障害があります。発達障害の家族性で、私自身も自閉症の拘りを持っています。

 

白石:本人とご家族も発達障害があるとの事ですが、自分だけの拘りや工夫はありますか?

 

工:私は光や音に関しての過敏性があります。(周りから見ると)色合いが特異だけど、自分では判っていないです。だけど、周りに1番指摘されるのは携帯電話の画面の色合いです。

 

白石:それはどんな色合いの特異性ですか?

 

工:(携帯電話の画面の)基本はブルーライトカットの状態にしているので、かなり赤みが掛かっている状態です。通常皆さんが使われている画面ですと、私には目に刺さってくるような感じがあります。だから私の携帯電話の画面は、赤身掛かったちょっと暗めの画質で使っています。

 

白石:iPhoneのバック画面は白か黒かを選べますけど、黒い方を使っていますか?

 

工:基本的には白を使っています。元々の画質を落としているので、茶色のような赤味が掛かった画面で見ています。

 

白石:私は画面が見づらいので、最近は白黒反転のダークモードにしていて、境界線がはっきりして見やすいのだけど。サイトによっては、白文字で書いているものが漏れているとか、黒抜きだと真っ黒で見えづらいとかあったり。スマホを調整しながら見ていると、周りから不思議がられます(笑)。

工さんもスマホを少し(画質)調整している感じですか?

 

工:私の場合は、スマホでかなり(画質を)調整をしていると言えます。

 

白石:私の背景を協会の柄にしているけど、工さんにはこのバーチャル背景は見えづらいですか?

 

工:私にはちょっと見えづらいかな・・・。

 

白石:工さんのご協力を得て、最初と終わりだけバーチャル背景にします。ここからは、バーチャル背景を切って続けますね。実は、私もコロナ対策で自宅からです(笑)

工さんの音の過敏性はどういう感じですか?

 

工:音に関して一番よくあるのが、犬や猫よけの超音波が出ているものがあるところをすぐに察知できます。近くを通るだけで、「この家あるな」ってわかります。近づきすぎると耳を押さえないと通れないです。

 

白石:通常は動物だけに聞こえるという周波数帯が、工さんには聞こえるという事ですか?

 

工:そうですね。なので、大きいショッピングモールとかの入り口は、(超音波が)大音量で聞こえるので、耳を塞いで通る事があります。

 

白石:それ(超音波)は、幾つぐらいから聞こえ出しましたか?

 

工:昔はそういった装置が巷になかったので、判らなかったのですが。装置が普及し始めて気がつきました。最初は「みんな聞こえているのだろう」って思っていて。でも、みんなは耳を塞がずに普通に通っている。これは「私が違うのではないか」って途中で気づいたのです。それが、28歳頃で。音の過敏性に気づいたのは、78年前です。

 

白石:音の過敏性は、工さんは自身が気づくのがだいぶん遅かったのですね。

 

工:そうですね。自分の世界観は「みんなと同じ」という意識があったからです。「自分はちょっと違うのだな」って気づくのに時間が掛かったのです。

 

白石:耳を塞がないと通れないという場所が同じなら、自分の気分や集中している時も音が気になりますか?

 

工:その時の状況によって違います。歩く事に集中していると音に気づくのが早いです。スマホをいじりながらだと、音が気にならない時もあります。私の集中の度合いで左右されます。

 

白石:そういった気づきが、少しづつだけれど薬を飲むように、自分で音をシャットダウンできるようになりそうですね。

他のきょうだいも工さんと同じような感じですか?

 

工:実の妹は、重度の知的障害で、コミュニケーションも難しい状態です。だけど、妹が耳を押さえていたりとか、すごく嫌がるという行動で、妹が「嫌なのだろうな」と気づく事ができます。

 

白石:工さんは妹さんの事が大好きだと言うことを伺いましたが、どうして妹さんが好きになっていったのですか?

 

工:妹と私は「年子で一緒に育ってきた」というのがあるから、障害があるにしてもないにしても、「妹は妹」。「妹は可愛い」という思いがありました。小さい頃は、障害が有るとか無いとか関係なく、一緒に成長していました。でも、妹の発達段階が途中から遅れていくのを見ていると、結局、最終的に「自分がなんかしてあげなきゃいけない」思いが強くなって行きました。そうなってくると、「自分がしてあげなきゃいけない」という思いにプラスして、「自分がしてあげなきゃいけない妹が可愛い」という思いになっていきました。

 

白石:いろいろな障害をお持ちの「きょうだいの形」ってあるから、かなり寄り添う所と少し距離を置く所。その中でも、工さん自身のこういった気づきもあって、工さんは福岡きょうだい会の会長という形で少し前に出て話合う。

人の気持ちを分かり合うというのは、「きょうだい」の当事者同士だから分かり合える事もありますか?

 

工:はい。あります。

 

白石:きょうだい・当事者が身につけた方が良い知識ってありますか?また、周りの人が「こうあったらいいな」と思う事はありますか?

 

工:周りの方に関して言うと、「そういう視点を持っている人がいる」という知識は重要だと思います。私自身も「自分は普通だ」と思っていたくらいで、周りの人も「そう見えているのだろう」と思っていました。定型発達の方達も今見ている世界が「他の人たちも一緒だろう」と思っていると思います。「違う見え方・聞こえ方の人がいるのだよ」という事をみんなに知ってもらう事はすごく重要だと思います。

 

白石:人の見え方・感じ方は人それぞれ違う。価値観が違う事だけでも判って貰うだけでも、少しは良いのかなと思います。「価値観の共有」まで行くと、同じ状態ではないと難しいのが正直なところ。「そういう価値観の人もいるのだな。じゃあ、自分はこう思うけど、こういう反対側の意味の捉え方もされてしまうかな」と思ったら、話す言葉も選んで、お互いが傷つかないようにとか。伝わるギリギリの範囲の言葉を選ぶとかですね。「こちらの常識は相手の非常識」という事にもなりかねないから。「自分の思いを自分の言葉で伝える」でも、ちょっと知識があると「逆の意味で捉えられる可能性もあるな」と思うと、一歩言葉を飲み込んで、少しだけ言葉の内容・言い方を変えてみるだけでも、仲良くなれたり。少なくても、関係が悪くならないと思います。「自分は自分」だけで接するのは厳しいのかなと思います。そうやってやる事で、工さんもそうでしょうけど、友達や人と分かり合える幅が拡がっていくものですね。

 

工:そうですね。「自分が違う」って気づけた事がすごく大きかったと思います。違う所の視点では、自分が今まで普通だと思って喋っていた事が違う事に気がついた。「周りもそうかもしれない」と思える視点があるだけでも、「考え方を変えなきゃな」とか、「言い方を変えなきゃな」とかの相手が見える視点を考えられる事が良かったと思います。

 

白石:なるほどですね。少しずつ視点が拡がって行く事が良かったのですね。

 

工:そうですね。視点が拡がって行ったと思います。

 

白石:工さんは自身が発達障害というのがはっきり判った時は、どのように感じましたか?ショックだったり、やっぱりそうなのだと思う人がいると思います。

 

工:実際に自分が「そうかな?」と思ったきっかけは、看護学校で実習に行く際、自分の中でやっぱりちょっと難しい状況があって、カウンセラーさんに相談しました。そこで、「もしかしたら、そっちの方(発達障害)があるかもしれないね」と言われまして。「自分も妹と同じような傾向があるかもしれない」と思った時、安心しました。

 

白石:安心なのですね。

 

工:はい。小さい頃、小学校や幼稚園で結構苛められた経験があって。(苛めが)「何が原因なのか?」自分の中で判っていなかったのですね。苛めは(発達障害の)特性が原因かもしれないと判った時、原因が判って良かったと思いました。

 

白石:親御さん達だと、子どもに(発達障害を)告知するのかをよく悩んだりするけれど、工さんの場合は、(発達障害が)判った事によって安心した。それは、自分の性格ではなくて、診断の傾向があるという事が判った上で、そこから対処だったり、心の気の持ちようが変わってきたのですね。

 

工:そうですね。

 

白石:工さん自身は、発達障害の告知や検査は早めに受けた方がいいと思いますか?

 

工:そうですね。家の娘は今4歳なのですが、3歳児検診では引っかかりもしませんでした。だけれども、自分に(発達障害の)特性があるし、(娘にも)特性があるかな?と思ったので、2歳半で療育センターに相談しました。そこで、現在はASD(自閉症スペクトラム症)の診断が(娘に)出ています。なので、私がお勧めしているのは、早めに(発達)相談をして欲しいという事です。もし違ったら違ったでその先を考えればいい事であるし、もしそう(発達障害)だったら早めに療育を考えればいい事であって、多分マイナスになる事はないのかなと思っています。なので、早めの相談・早めの診断はすごく役に立つ事だと思います。

 

白石:工さんは福岡きょうだい会の会長という立場もあるのだけれども、兄妹姉妹に向けての考え方や伝え方の提案はありますか?

 

工:兄妹姉妹に関して言いますと、兄妹姉妹にも(発達障害の)知識を持ってもらいたいと思っています。(兄妹姉妹に)いろいろ(発達障害に関して)勉強してもらいたいけれど、一人で勉強するのは難しいと思うので、まずは「人の輪を拡げて欲しい」とお伝えしています。知っている人・助けてくれる人を増やす事から始める事を提案しています。何か分からない時に分からない事を教えてくれる人がいる環境を作りませんか?と兄妹姉妹の方に提案しています。それにプラスして、自分自身の知識アップもやって行きましょうと、お話しています。

 

白石:私が福岡きょうだい会の顧問をさせてもらって、一番に思っている事は、自分で全部を知るのは難しいから、(発達障害の事を)知っている人と友達になったり、繋がる事が一番手っ取り早い(表現に語弊があるかもしれませんが)。例えば、障がい福祉に関しては、現職で働いている人に聞くと(答えが)直ぐに分かる。けれど、一般の方達は調べようと思っても何から手をつけたら良いのか分からない。(自分で)調べたが故に「これって申請できない」と思い込んでしまう事もある。けれども、(障がい福祉分野の)現職の方に聞くと「特例でこういうのがあるよ」「これに該当するよ」という知識がある。知っている人に聞くと一言で終わってしまう事だけれども、(発達障害の)特性があるので(自分で)調べまくってしまう(笑)

 

工:そうですね。(発達障害の特性があると)深みに入りやすい(笑)

 

白石:深みに入ってしまうと、「いやいや、それって一番上の方の特例に該当するのかを調べたのだけれど」という事でも、専門職から見れば「たったそれだけ?」と思われるような事がある。実際に、(自分で)調べれば調べるほど悪循環に陥って、ループにはまってしまう事がある。だから、(発達障害の事を知っている人に)聞いていくのがいいと思います。

(相談に)行く時には、良い面も悪い面も隠さずに聞く事が大事だと、私個人考えています。あまりきれい事ばかり言われても、現実はそんなに甘くないと思うし。逆にきつい事ばかりを言われると、暗くなってしまう(笑)

 

工:そうですね。(相談を受ける方も)心が折れてしまいます(笑)

 

白石:(相談を受ける方も)心が折れないように、そこのハイブリッドで(笑)。

こっちの人には、「この人には何かきつい事しか言われないけれど、事実は事実だと思える」とか。こっちの人には、「ふんわりした事ばかりを言ってくれて、心は和むけれど(相談)内容が進まない」という事もある。だから、是非いろいろな人と友達になる。友達は無理でも、繋がりを持って、相談した時に少しでもいいからアドバイスを貰えるとか。ゆっくり自分のペースで、少しずつ知識を上げて行くのがいいのかなと思いますね。特に十年一昔前に言われていた常識が、今の非常識に変わっている事もあるから、知識のアップデートをしていかないと。今はオンライン化が進んで、知識を手に入れやすくなっているけれども、逆に情報が溢れているから大変なのかな。

 

工:そうですね。情報の取捨選択が難しいので、(発達障害の事を)知っている方に聞くのは大切だと思います。

 

白石:(最後なので、バーチャル背景に戻します(笑))

最後に工さんから、この対談を見て、その人の立場で「いやいや。ここはこうだ」「こうじゃないよ」とか否定的な意見もあると思いますが、前向きに。この対談を見た方に伝えたい事や伝わって欲しい事はありますか?

 

工:今回お話したように、私は福岡きょうだい会の会長であるので、兄妹姉妹に向けてお話させていただきます。やっぱり、兄妹姉妹にもいろいろな方がいらっしゃって、「私は全面的に兄妹姉妹を支援します」という方もいれば、「私はもう関わりません」という方もいらっしゃいます。それ(関わらない)も、その人の考え方なので良いと思います。少しでも興味がある・兄妹姉妹を支援したい気持ちがあるのならば、学ぶ機会を大切にして欲しいと思っています。学ぶ機会は、勉強だけではなくて、「こういう人がいるのだ」と知る事だけでも勉強であり、知識になる。この対談を見て、「こういった人もいるのだな」と多様性を知ってもらう事がすごく大事だと思っています。

(兄妹姉妹に)一番伝えたい事は、兄妹姉妹がきょうだいとして生きるのではなく、(その人)本人として生きてもらいたいです。兄妹姉妹だから、(きょうだいが)自分の人生になるのではなくて、いろいろな方と知り合って、知識を増やして行って、使える物は使って。そして、自分らしい人生を送ってもらう事が重要だと思っています。

 

白石:ありがとうございます。

 福岡きょうだい会は、今は2ヶ月に1回のペースでやっているのですね?

 

工:そうです。2ヶ月に1回、定例会をやっています。

 

白石:今は新型コロナウイルスの影響で、Zoomを使ったオンラインでも定例会をすると聞いています。

 

工:はい。今度オンラインで行います。

 

白石:オンライン開催のメリットは、全国の方が参加しやすくなっている。

 

工:そうですね。いろいろな所と繋がりやすくなります。

 

白石:いろいろな地域で、悩まれている方達と繋がる事で少しでも。解決するか、しないかを置いておいて。誰かにその想いを伝えるとか、話せる事が、心の中の重みだったり、中には悩みが少しでも軽くなる事があると思います。そういった、心を軽くする面もきょうだい会にあると思います。

 一般社団法人発達障害支援アドバイザー協会としても、是非とも応援していきます!

 

工:ありがとうございます。

 

 

白石・工:今後ともよろしくお願いいたします。