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ASDの特徴(前編)

1.顔の表情が読めない

アスペルガー症候群の子供は、人と視線を合わせようとしない、と感じられることがしばしばあります。これは、自閉症と同じく、他人の視線に関心をもたないからです。

また、人の顔を見て、誰だか認識しようとしたり、その人がどのような表情をしていて、どんな気持ちでいるかを読みとることも苦手です。

顔の表情が読めない原因には、人そのものに関心がないからということもありますが、顔全体で表される感情(表情)をとらえ、その人がどんな気持ちでいるかを想像することが困難であることもあげられます。

アスペルガー症候群の人は、顔のなかの眉や目、鼻、口などのパーツ(細部)には着目するものの、それらを組み合わせて全体で表される表情を理解することが苦手なのです。

 

2.大人びた話し方をする

アスペルガー症候群の子どものなかには、ことばはよく知っていて、大人が使うような難しい表現を使ったり、ていねいな口調で話したりする子がいます。また、アナウンサーのような平板な語り口で、抑揚をあまりつけずにしゃべる子もいます。ことばに感情を込めることができないのです。

ふつうの子なら、「ねえ、ママ、そのおもちゃ取って!」と、「取ってほしい」という気持ちをぶつけて大きな声で叫ぶような場面でも、アスペルガー症候群の子は、「そのおもちゃを取ってください」と淡々と伝達するだけです。

同様に、相手が感情を込めて話すことばも、うまく受けとめられません。相手が抑揚をつけて話しても、うれしいのか、怒っているのか、そのことばの裏側にある気持ちを推しはかることができません。つまり、ことばで感情を伝え合うことが困難なため、コミュニケーションに支障が生じてしまうことになります。

 

3.比喩や皮肉がわからない

ことばを字義通りにしか受け取れないというのも、アスペルガー症候群の特徴です。たとえば、「あのお姉ちゃん、あんなにいっばい泣いて、まるで赤ちゃんだね」と話しかけられても、

「あの人は、小学生で、赤ちゃんではありません」などと返事をします。比喩がわからないのです。

また、先生から「寄り道しないで、まっすぐ家に帰りなさい」などと言われても、「学校から家に帰るまでの道は、まっすぐではありません。途中で曲がり角を曲がらなければなりません」などと、大まじめに答えます。決して、先生を茶化しているわけではなく、「まっすぐ」の意味の広がりを理解できないだけなのです。婉曲的な表現に接したとき、その真意を理解することができず、皮肉やお世辞も字義通りにしか受け取れません。

そのため、人と円滑なコミュニケーションをとることが難しいと言えます。

 

4.こだわりが強い

アスペルガー症候群の子どもは、道順や手順、方法論などに強いこだわりをもっていることが多いです。そして、自分がこだわっている道順ややり方を変更しなければならない場面では、強い不安に襲われ、場合によってはパニックになることもあります。

パニックは、大声で泣く、物を投げつける、その場から走っていなくなる、といった行動のほか、思い通りにならないことを人のせいにしたり、誰かに怒りをぶつけて八つ当たりしたりという他者に怒りの矛先を向けてしまうこともあります。